シャープ アップルiPad液晶生産に不都合な真相(7)

 シャープは、アップルのiPad向けに液晶を生産しているが、自慢のIGZOの解像度が生かされていないという不都合な真相があるようだ。そうだとすれば、既に量産が確立され、販売数量の多い液晶パネルとの競争力の差は大きい。

 シャープ経営陣は、IGZOを再建の切り札としているが、その道のりは険しいのかもしれない。


シャープ堺工場の再建とアップルとの関係

ホンハイとアップルが再建の鍵の一つ

前回、シャープの堺工場にホンハイが出資、シャープのテレビ事業をホンハイが再建していることについてまとめた。ホンハイは世界最大規模の受託生産の会社であり、アップルのiPhoneやiPadの生産を行っている。

 アップルとの関係を見ると、アップルTVをシャープとホンハイ共同開発の可能性や、シャープ倒産危機にアップルが23億ドルの支援を行った可能性が指摘されている。つまり、シャープが再生するかどうかを検討するうえで、ホンハイとアップルは極めて重要な会社と言えるであろう。

シャープはアップルに液晶パネルを供給

取引関係を見ると、シャープは、アップルのiPhoneやiPad用に液晶パネルの供給を行っている、有力な会社の一つだ。シャープが社運を賭ける新型液晶パネルIGZOも、アップルへのさらなる販売が視野に入っているが、大きな問題がおきている。日経新聞2012年11月23日2面を見ると、シャープのジレンマが分かる。

野村証券本社でのやりとり

決算説明会で4度目の業績下方修正

 11月1日午後5時、シャープ社長の奥田隆司(59)と財務担当専務の大西徹夫(58)は、東京・日本橋の野村証券本社で2012年4~9月期の決算説明会に臨んだ。業績下方修正は今年に入って4度目。質問はおのずと厳しくなった。(日経新聞)
野村証券本社で、シャープが決算説明会を行った様子が、報じられている。シャープの倒産危機は中間決算赤字により認識した人が多くいたであろう。

 さて、業績下方修正が4度目になると、さすがに、業績予測の信憑性は薄れる上に、会社の将来について悲観的になるのも仕方がない。

シャープの将来はIGZOで成長

「これから何で成長していくつもりか」 
「稼ぐのは(高精細で消費電力の少ない新型液晶)IGZOのようなオンリーワン技術。顧客からの評価も高い」(奥田) 
IGZOがシャープを救う、ということか」 
そうだ」(奥田)
このやり取りを見て、驚いた方がいるのではないだろうか。管理人は、このやり取りが、2兆円の売上高を誇る大企業の話とは思えず、正直な所、驚いている。

 その理由として、競争の激しい液晶パネルの一つの技術に依存するとなると、リスクが極めて高い。さらに、韓国企業との投資競争に敗れた、デジタル家電の二の舞になるのではないかという懸念があるからだ。

アップルなど海外メーカーはIGZOに強い関心

 確かに世界のスマートフォン(高機能携帯電話)、タブレット端末メーカーはIGZOに強い関心を示している。今のところ商用生産しているのはシャープだけ。海外メーカーで最初に使ったのは米アップルだ。3月に発売した新型のiPad(アイパッド)」で採用した。(日経新聞)
IGZOは、世界中のメーカーの関心が高いが、商用化しているのはシャープだけのようだ。そうなると、奥田社長がIGZOの技術が、シャープ再生の切り札になると考えているのは、理解できる話だ。

 すでに、アップルがiPadで採用していることも、その自信を裏打ちしているのであろう。しかし、アップルに搭載されたIGZOはその能力をフルに発揮する事はなかったようだ。

アップルは、IGZOの解像度を落としている

 しかしiPadを買っても、液晶パネルがIGZOとは限らない。新型iPadには、シャープ製のIGZOと韓国サムスン電子などが作るアモルファス液晶という2種類のパネルが混在しているからだ。それが消費者に分からないよう、アップルは性能で勝るIGZOの解像度をわざと落としている。(日経新聞)
どうやら、アップルは、iPad製造に使用する液晶パネルは、シャープとサムスンから仕入れているようだ。アップルは、iPadに使用する、パネルの違いを分からないようにするために、IGZOの解像度を落としている。

IGZOのメリットが生かせず

IGZOは製造コストが高くなる

一般的に、すでに量産方法が確立しているものと、新しい製品であれば、量産方法が確立しているものの方が歩留まりは高いであろう。

 加えて、液晶パネルの原材料を調達する事を考えても、シャープしか製造できないIGZOと、一般的な液晶パネルでは、IGZOの原材料のほうが調達価格が高くなりそうだ。

技術の突出が足を引っ張る

奥田社長は、IGZOの技術的な優位性が、将来の成長に繋がると見ているようだが、皮肉な事にシャープの技術が突出している事が足を引っ張ったようだ。

 価格が高くても、自慢の解像度を生かせれば話は別だが、それが発揮できないとなると、ただの高い液晶パネルとなってしまう。 シャープの独自技術の保持と販路拡大のジレンマについて、次回は標準化の観点から見ていきたいと思う。(続く)

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