シャープのテレビ事業をホンハイが再建(6)

ホンハイは、赤字であった旧シャープ堺工場に出資、テレビ事業の経営改善に乗り出した。ホンハイが経営に乗り出してから、黒字に転換。ホンハイとシャープとの経営力の違いが、数字になって現れている。

シャープの決算時に、現在の工場稼働率であれば、減損損失を計上する必要がないため、赤字は激減していたであろう。

シャープとホンハイ提携難航の理由を見てみると、政治的な理由や株価の低迷などが背景としてあったようだ。その間に堺ディスプレイプロダクト(旧シャープ堺工場)の改善は着々と進んでおり、ホンハイが経営に関与後に黒字化を達成している。2012年11月22日の日経新聞2面にその内幕が書かれている。

ホンハイが元ソニー子会社の社長を派遣

「ひとつよろしく頼みます。」小さな体にダボっとしたダブルのスーツ。チョビひげに色つき眼鏡。7月、堺ディスプレイプロダクト(SDP=旧シャープ堺工場、堺市)に出資したホンハイ精密工業が送り込んだ男は、人なつこい笑顔を浮かべた。
ホンハイ(鴻海)が送り込んだ人材の容姿であるが、かなり特徴的なようだ。その経歴や国籍について見てみると、ホンハイは適材の人間を送り込んだようだ。
「なんや、日本語うまいやん」。台湾からの「進駐軍」に身構えていたシャープ側の社員は拍子抜けした。うまいはずである。SD副社長になった彼の名は、SDP副社長になった彼の名は三原一郎(68)。かつて欧州でソニーのテレビを売りまくったやり手の営業マンだ。ソニー子会社の社長を経て、2006年にホンハイグループ、フォックスコンジャパンに移った。
ホンハイは、堺ディスプレイプロダクトに日本人を送り込むことで、シャープ側の社員の警戒感を解くことに成功したのではないだろうか。さらに、ソニー子会社の社長を送り込むことで、ソニーとの関係修復を狙っている。

管理人が思ったのは、三原氏のような人材を抱えている点に、ホンハイのグローバル企業としての人材の厚さを感じる。ホンハイが、三原氏をSDPに送り込んだ効果は、絶大であったようだ。

ソニーと関係修復 販売先の確保

シャープとソニーの関係悪化

ホンハイが三原を堺に送った狙いはソニーとの関係修復。ソニーは09年、堺工場に一部出資した。その後、家電エコポイント制度などの特需で液晶パネルが不足すると、シャープは自社のテレビへの供給を優先した。「ソニーは二度とシャープからのパネルを買わない」と怒った。
シャープが、生産した液晶パネルを自社の液晶テレビに優先して供給した事は、たびたび報道されている。どうやら、ソニーもその影響を受け、激怒していたようだ。

ソニーからの注文をSDPが取り付け

ホンハイは三原を間に立てることで、そのソニーから注文を取り付けた。
三原氏を起用した効果は、SDPにとって絶大であったようだ。ソニーはテレビ価格下落で撤退寸前のようであるが、販路確保の効果は絶大であったようだ。

業績改善に成功

シャープの大赤字の主因の堺工場 業績が黒字に転換

三原たちホンハイチームが乗り込んでから3ヶ月。SDPの7~9月期の税引き前利益は黒字に転じた。12年3月期にシャープが計上した大赤字の「主犯」とされた工場が、にわかに息を吹き返したのだ。ホンハイは一体どんな魔法を使ったのか。
シャープの堺工場は減損損失の計上により、シャープ赤字の原因とされてきた。ところが、ホンハイ主導の経営再建により業績悪化に成功している。その要因について見てみると、ソニーとの取引復活など基本に忠実な施策を実施したことのようだ。

歩留まりの上昇 販路の拡大

SDPと取引のある部材メーカーの幹部が種明かしをする。
歩留まりを上げ、販路を広げた。それだけのことです。」
片道切符でSDPに移った社長の広部俊彦(56)ら元シャープの人間には「絶対生き残ってやる」という意地があった。技術陣はパネルの原価構造を根本から見直し、歩留まりを100%近くに引き上げた。
歩留まりとは、製品の原材料を投入して、どれだけの割合が完成品として、できあがったのかを表す数字である。歩留まりは100%が最大であり、低ければ低いほど不良品が多かったり、生産工程に非効率な面が多いことを表す。

SDPに移籍した、元シャープの人材は歩留まりを100%近くに引き上げたということは、不良品がほぼなく、生産工程に無駄がない事を意味する。シャープはホンハイに工場売却を発表したが、堺工場以外についても、売却後に生産性が向上するかもしれない。

生産ラインの稼働率が3割から9割に上昇

ホンハイ薫事長の郭台銘(62)は日本からの製造受託に明るい右腕の林忠正を週1回のペースで日本に送り、広部をサポートさせた。台湾からは営業の精鋭部隊が約50人やってきて米新興テレビメーカーのビジオなど、新たな販路を切り開いた。ホンハイの出資前、3割だった生産ラインの稼働率は9割を超えた。
ホンハイは、堺工場の稼働率工場のために、営業部隊が新たな販路を切り開いた。堺工場の生産性向上と、ソニーやビジオといった販路を確保することで生産ラインの稼働率が劇的に改善している。

シャープ赤字の原因に、減損損失の影響が大きかった事を考えると、生産ラインの稼働率が9割であれば計上する必要はないため業績は劇的に改善していたであろう。振り返ってみると、その原因はシャープの経営陣にあったようだ。

シャープ経営陣の経営失敗

「高機能なら売れる」。技術への過信から売れないパネルを作り続けたシャープ。ドイツ証券シニアアナリストの中根康夫(44)は「無理に在庫を詰んで工場の稼働率を上げ、利益を前出する体質になっていた」と手厳しい。ホンハイが正常な形に戻したとたん、堺の赤字はぴたりと止まった。
どうやら、シャープ堺工場の悪化は経営陣の経営方針が、大きく影響しているようだ。シャープとホンハイ提携難航が伝えられているが、堺工場の劇的な改善を見ると、ホンハイの手腕に期待感を抱いたのは管理人だけではないだろう。シャープ アップルiPad液晶生産に不都合な真相(7)に続く。

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