鴻海とシャープのアップルリスク回避

鴻海とシャープのアップル依存のリスクに注目が集まっています。鴻海は、自社製品の製造販売拡大により、リスク回避を行うようですが、既存の顧客は価格競争に巻き込まれ、デジタル家電がさらに値下がりする可能性があります。

(5)受託生産の顧客にも配慮

鴻海テレビ製造販売 シャープに影響の続きです。鴻海について、2013年1月15日の日経新聞5面が報じています。
台湾では鴻海傘下の家電量販店「賽博数碼広場」(サイバーマート)で、ケーブルテレビ会社などと組んで視聴契約とセットで販売する。店頭価格は日本円換算で約12万円。中国ではサイバーマートがラジオシャックと合弁展開する店舗で販売。テレビのブランド名は受託生産の顧客への配慮から鴻海の名前は出さない。中国では「ラジオジャック」とするなど、柔軟に対応する。(日経新聞)
鴻海はテレビの販売に進出を発表していますが、受託生産の既存の顧客には配慮する姿勢を示していることが分かります。

(6)鴻海は5000店の合弁店舗を目指す

鴻海の郭台銘薫事長は昨年6月、新たな成長エンジンとして家電量販など川下分野の事業を強化すると表明した。 
01年に中国で買収したサイバーマートは現在は中台で40店舗を持つが、13年には倍増させる方針。 
ラジオシャックとの合弁店舗は将来は5千規模を目指す。ここに目玉商品として自社製品を置き、集客につなげる。中台以外へ自前の販路が拡大すれば、自社製品の販売地域も増える見通しだ。
管理人が驚いたのは、鴻海が想定している店舗の規模です。鴻海は、合弁店舗と言えども5000店舗を目指すと発表しており、実現すれば強力な販売網を持つ事になります。

鴻海のこの手法について、お叱りを受けるかもしれないですが、パナソニックを思い浮かべた方はいないでしょうか。現在は、アマゾンが流通大手として強い力を持っていますので、当時と比較はできないですが、鴻海の戦略が成功するのか気になりますね。

(7)鴻海のビジネスモデルと問題点

利益率が5%に満たない

受託生産の加工費は例えばノート型パソコンの場合、製品価格の5%以下などと低い。ここに人件費上昇が加われば利益はさらに削られる。鴻海が受託生産向けの部材や設備を生かして自社製品を作り、自社の流通網で売れば受託生産のみに比べて利益を囲い込める。
鴻海のビジネスモデルについて指摘がありますが、利益が製品価格の5%に満たないというのが、そもそも低いのではないでしょうか。中国の主力工場がある深圳市の最低賃金が10年間で3倍になったことが指摘されていますが、ますます利益率が減少する要因となっているのでしょう。

売り上げの5割がアップル依存のリスク

事業モデルを一部修正する背景にはアップル頼みのリスクの顕在化もある。 
鴻海の現時点の受託生産の売り上げの約5割はアップルからの受注が占めるとみられるが、足元でiPhone5は競争激化で販売が伸び悩み、部品メーカーや鴻海への発注が減っているもよう。業績への影響を懸念する声が強まっている。
鴻海の売上の約半分が、1社からの受注とするとかなりリスクが高い事が分かります。アップルの減産の影響について見ると、シャープはiPhone5減産の影響がひどい状況になる可能性が報じられています。

鴻海が、自社の液晶テレビ生産と販売を行うのは、アップルに依存するリスクを避ける事が一つの狙いである事が分かると思います。

(8)大型テレビの価格競争

鴻海は自社テレビについて「販売方式などが異なり、受託生産の顧客とは競合しない」(広報)と説明。画面サイズも競合相手が少ない大型品に限定し、批判をかわす構えだ。ただ鴻海のテレビ発売を受けて台湾では大型テレビの値下げ競争が激化している。
鴻海のテレビ発売により、価格競争がすでに始ったようです。本格的に、台湾や中国などに進出すれば、さらなる価格競争が起こりそうですね。

(9)既存の顧客が逃げるリスク 

鴻海は長年の受託生産で顧客の技術やノウハウを蓄積。IT(情報技術)機器の売り上げ規模や生産能力では、自社製品で世界最大手の韓国サムスン電子などに迫りつつある。 
テレビ以外も含めて自社製品を本格展開した場合は、顧客の信頼低下や受注減を招くリスクもある。
鴻海は、テレビ事業進出によりアップルリスクを回避しようとしていますが、最大の問題点は既存の顧客との折り合いをどのようにつけるのかでしょう。

鴻海が、テレビ生産販売に乗り出すと、当然の事ながら鴻海にテレビ生産を委託している企業の製品と競合します。
シャープは、鴻海に工場売却を検討していますが、テレビ事業の強力なライバルをさらに強くする可能性があります。

鴻海とシャープは、アップルリスク回避に迫られています。鴻海の動向によっては、液晶テレビだけでなく、デジタル家電のさらなる価格の下落要因になりそうですね。

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