シャープ格付格下げの理由 短期有担保借入の増加

シャープ格付格下げの理由を見ると、格付け会社は短期有担保の借入増加を危惧している事が分かります。シャープ向けの銀行借入は、有担保かつ借入の期間が短く、銀行がシャープを信用していないことが分かると思います。

(1)シャープ格付の格下げ

シャープ格付は、フィッチもS&Pも格下げで投機的水準になっており、2012年11月の時点で事実上の普通社債発行が不可能になっていました。

シャープ格下げをS&Pが改めて発表しましたが、経営が悪化している事がその内容から分かると思います。


(2)格付けをBに引き下げ

シャープの格下げについて、2013年2月15日のS&Pが、【S&P】シャープの長期優先債券を「B」に格下げ 長期・短期格付けの引き下げ方向の「クレジット・ウォッチ」を継続と発表しているので内容を見てみましょう。S&Pの説明が長いため、一部省略しています
シャープの総資産に対する担保付債務の比率が上昇しており、かつ今後半年から1年程度の間に同比率が低下する可能性は低いとS&Pはみていることから、長期優先債券の格付けを「B」に1ノッチ引き下げたうえで、格下げ方向の「クレジット・ウォッチ」(CW)を継続。
シャープ格付けが格下げされましたが、格下げの理由について見てみましょう。シャープ財務と借入のポイントで説明しましたが、シャープは業績悪化により自己資本比率が低下を続けています。

(3)最終損益が赤字で自己資本比率低下

シャープは業績悪化により、シャープ2012年第3四半期決算は営業黒字と毎日新聞が風説の流布に近いものを報道していましたが、最終損益は赤字です。

決算で営業黒字を計上したとしても、最終利益が赤字であれば、企業に利益が蓄積されません。シャープは、そのため借入返済が当面、不可能ではないかと見られていることが分かります。

(4)格下げの可能性をクレジットウォッチで示唆

長期会社格付け「B+」、短期会社格付けおよび個別債務の短期格付け「B」は、引き下げ方向のCWを継続。
同社の中長期的な事業および提携戦略と、2013年7月以降の流動性を長期資金により拡充し、短期資金への依存度を軽減する能力を再評価したうえで、CWを解除する。
シャープの格付についての条件を見てみると、長期の借入金を増やせるかどうかに注目している事が分かります。

(5)社債のデフォルトリスクと返済順位

長期優先債券の格下げは、担保付債務など優先順位の高い債務の残高が増加しており、かつ同残高の総資産に対する比率が今後半年から1年程度の間に低下する可能性は低いとS&Pがみていることに基づく。 
それに伴い、格付け対象の無担保社債の位置付けが相対的に弱まっているとの見方を反映したものである。
社債は、シャープが倒産したときに、担保付借入より返済順位が下になります。
  1. シャープの担保付の借入
  2. シャープの無担保社債
シャープの担保付借入のほうが担保処分で保全が行えるため、無担保社債は担保付の借入の割合が増加すると、返済の行われる可能性が低下します。

(6)担保付借入の割合

担保付債務の急増

  • 2012年9月末 1,995億円シャープの担保付債務 対総資産比8.9%
  • 2012年12月末 3,344億円シャープの担保付債務 対総資産比15.4%
シャープの担保付債務が3ヶ月で急増している事が、分かると思います。担保付債務が増加したということは、無担保の資産が減少していることを表しており、無担保債務の返済可能性が低下します。
S&Pでは、戦略的な提携の一環として資本増強などの形で多額の無担保資金を受け入れることがない限り、同社が有担保の短期借入金への依存度を低下させるのは難しいとみている。
シャープの債権格付け格下げについて、担保付債務の対総資産比15%以上の水準が目安になることを説明しています。シャープの格上げについては、資本増強などがない限り、格上げは難しい事を示唆しています。

(7)短期債務は8000億円を超える

S&Pでは、同社における流動性の水準を、今後1年間に必要な資金を下回っているとの見方にもとづき、「やや低水準(less than adequate)」と評価している。2012年12月末時点で短期借入金6,725億円、1年以内に償還を迎える債券2,059億円(2013年9月末に償還を迎える転換社債2,005億円を含む)、コマーシャル・ペーパー80億円を抱えるなど、短期債務への依存度は依然高い。
S&Pの再三の指摘で注目なのは、シャープの短期債務が巨額である点です。
  • 短期借入金6,725億円(2012年12月末)
  • 債券1年以内に償還2,059億円(2013年9月末償還2,005億円)
  • コマーシャル・ペーパー80億円
シャープが1年以内に返済する必要のある債務は、営業利益が100億円に満たない現状を考えると、非常に多い事が分かります。

(8)銀行はシャープをあまり信用していない

同社は2012年9月下旬に主力取引銀行との間で総額3,600億円の協調融資(シンジケートローン)契約を締結したが、同契約の期間は2013年6月30日までと短く、同社では引き続き短期債務への依存度が高い状態が続く見通しであることから、S&Pでは同契約締結によって同社の負債構造が改善したとは考えていない。
シャープに対して銀行が長期の貸し出しを行っていないのは、期限の利益を与えていない(長期間の貸出や保証など)ことを意味しています。シャープ向け貸出を銀行は、有担保で行っており、シャープを信用していないことを表しています。

シャープ格付格下げの理由を見ると、シャープ資本は増資により年金債務の対処も迫られており、何らかの資本増強策が必要である事は、間違いなさそうですね。

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2 件のコメント:

  1. 長期融資が受けれず短期(高利)融資が増えていることは
    銀行からの信用度が低い=貸し倒れ懸念があるという意味ですよね。私も最近、株に挑戦するため勉強中ですがシャープみたいに株価が乱高下する企業は格好の投機銘柄となっていて掲示板を除くと、自分の利益を守る?増やす?ために
    色々な情報や憶測を書き込んで他者を悩ませています。
    シャープやシャープの商品を愛している訳では無い人が大半なんです。
    要するにシャープを応援するという事は、格付けや投資家たちに惑わされず商品を愛用しつづける&株保有を継続することではないかと思います。
    ただ事実は事実として受け止め、結果を見極めることが肝要ではないかと思っています。

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    1. >匿名さん。
      こんにちは^^
      シャープは株価の変動がすごいですよね。

      仰るとおり、結果を見極めることが肝要だと思います。
      シャープの広報やマスコミが何を考えているのかよく分からないですが、事実が坦々と報道されれば、いいですよね。

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